「DAT企業って最近よく聞くけど、何のこと?」
そんな疑問にお答えします。

企業がビットコインを「財務戦略の中心」に置く動きが世界中に広がっています
これが暗号資産市場の新しい大きなトレンドです
DAT企業とは?一言で言うと「ビットコインを貯め続ける企業」です
DAT企業(Digital Asset Treasury企業)とは、ビットコインなどの暗号資産を企業の財務戦略の中心に置き、積極的に買い増し続ける上場企業のことです。
従来の企業は余った資金を株や債券で運用していました。DAT企業はその代わりにビットコインを買い続けるという全く新しい財務モデルを採用しています。

普通の企業の財務:
余剰資金 → 株・債券・不動産などで運用
DAT企業の財務:
余剰資金 → ビットコインを買い続ける
↓
株価が上がる → 株を発行して資金調達
↓
その資金でさらにビットコインを買う
↓
ビットコインが上がると株価も上がる
→「善循環ループ」

企業版の「ガチホ(長期保有)戦略」と言えばわかりやすいかもしれません
DAT企業の元祖:ストラテジー社とマイケル・セイラー
DAT企業の先駆けは、アメリカのストラテジー社(旧マイクロストラテジー)です。
もともとソフトウェア会社だった同社が2020年8月、マイケル・セイラー会長の判断で余剰資金2億5,000万ドルをビットコインに投資したことから始まりました。
その後も株式・社債・優先株の発行で資金を調達し、買い増しを続けた結果、2026年6月28日時点で847,363BTCを保有しており、平均取得単価は1コインあたり75,653ドルです。
現在は世界初かつ最大のビットコイン・トレジャリー企業と自認しています。

かつてはデータ分析のソフトウェア会社でしたが、今やビットコインを80万枚以上持つ企業に変わりました
ストラテジー社の「善循環ループ」の仕組み
ストラテジーの戦略の核心は、セイラー氏が「善循環」と呼ぶ仕組みです。
①株価がBTC保有価値より高い時に増資・社債発行
↓
②調達した資金でビットコインを購入
↓
③BTC価格上昇→株価上昇
↓
①に戻る・繰り返す
この仕組みが機能する前提は「ビットコインの価格が長期的に上がり続ける」という確信です。セイラー氏はビットコインが年率10%以上で上昇し続けると信じ、一切の売却をせずに積み上げてきました。
ポイントとなる指標:mNAV
ストラテジー株を見る上で重要な指標が**mNAV(エム・エヌ・エー・ヴィー)**です。
mNAV = 時価総額 ÷ ビットコイン保有評価額
企業の株式市場での評価が、保有しているビットコインの価値の何倍かを示します。

mNAVの見方:
mNAV > 1:
株価がBTC保有価値より高く評価されている
→ 将来の成長・買い増し期待が上乗せされている
mNAV = 1:
株価とBTC保有価値がほぼ同じ
mNAV < 1:
理論上はBTCを直接買った方が割安
→ 株の発行による資金調達が難しくなる
ストラテジーのmNAVはかつて3〜4倍で推移していましたが、2026年に入り株価が下落したことで1倍を下回る水準まで低下しました。

mNAVが1を割ると「株を買うよりBTCを直接買った方が安い」という状態になります
この状態では新たな増資が難しくなります
2026年:ストラテジー社に試練が訪れている
2026年はストラテジー社にとって試練の年でもあります。
同社は優先株(STRC)という金融商品を発行して資金調達し、その配当を支払い続ける必要があります。ところが株価が下落したことでSTRCも設計上の100ドルを大きく下回り、年間1,200億〜1,800億円規模の配当義務が重荷になってきました。
ついに2026年6月、ストラテジーはDAT戦略に転換した2022年以降で初めてビットコインを売却しました。「絶対に売らない」と言い続けたセイラー氏が初めて売ったことで、市場に衝撃が走りました。

ストラテジー社の現状(2026年7月時点):
・BTC保有量:843,775BTC(世界最大)
・平均取得単価:75,653ドル/BTC
・優先株配当義務:年間1,200〜1,800億円規模
・株価:52週安値を更新
・初のBTC売却:2026年6月に実施

「善循環」は株価が上がり続けることが前提
株価が下がると資金調達が難しくなるのがDAT企業の最大のリスクです
なぜSNSで熱狂されているのか?
理由①:株を買うだけでビットコインに投資できる
個人のビットコイン売却益は最大55%の雑所得課税ですが、株式売却益は約20%の分離課税です。NISAや証券口座でも買えるため「ビットコインに投資したいけど取引所の開設が面倒」という人にも注目されています。
理由②:ビットコインよりレバレッジが効いた値動き
DAT企業の株価はビットコイン価格以上に動く傾向があります。ビットコインが2倍になるとDAT企業の株が4倍・8倍になることもあり、「夢がある」とSNSで盛り上がる最大の理由です。
理由③:セイラー氏の発言が毎回話題になる
マイケル・セイラー氏はXで毎週のようにビットコイン購入を報告し、強気の発言を続けています。その発言が市場を動かすことも多く、フォロワーが熱狂しています。

「次のセイラーを探せ」という流れで、世界中でDAT企業ブームが広がっています
DAT企業がビットコイン価格・市場全体に与える影響

CoinGeckoは188の機関による合計1,900,055BTCの保有状況を追跡しており、これはビットコインの総供給量の約9%に相当します。
プラスの影響:供給を吸収して価格を底支えする
DAT企業が買い続けることで市場に流通するビットコインが減り、価格の底支えになります。
DAT企業の効果(プラス面):
・ビットコインを市場から継続的に吸収
・「企業が認めた資産」という信頼感の醸成
・機関投資家が参入するきっかけに
・市場全体の底上げに貢献
マイナスの影響:売りが出ると価格急落のリスク
逆に、資金繰りが苦しくなって売却せざるを得なくなった場合、大量売りが出て価格が急落するリスクがあります。
実際に2026年6月、ストラテジーがビットコインを売却したというニュースだけでビットコイン価格が一時4%以上下落しました。

DAT企業の株を持っていなくとも、これらの企業の動向を無視できないほどに、DAT企業の影響は大きくなっています。
まとめ
- DAT企業はビットコインを財務戦略の中心に置き買い増し続ける上場企業
- 元祖はストラテジー社(マイケル・セイラー)で2026年7月時点で84万BTC以上を保有
- 株式・社債発行で資金調達→BTCを買う→株価上昇という「善循環ループ」が基本モデル
- mNAVは「時価総額÷BTC保有評価額」でDAT企業を評価する重要指標
- mNAVが1を割ると増資による資金調達が難しくなる
- 188機関が合計190万BTC保有しビットコイン総供給量の約9%を占める
- 2026年はストラテジー社が初のBTC売却を実施し市場に衝撃を与えた
- 購入は価格底支えに・売却は急落リスクにつながる両面がある

DAT企業は暗号資産市場の新しい大きなプレイヤーです
「熱狂」と「リスク」は常に表裏一体。次回は日本のDAT企業について解説します



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