KOLは本当に「識者」なのか?――IZAKA-YA騒動から考える暗号資産インフルエンサーの闇

はじめての暗号資産

暗号資産レンディングサービス「IZAKA-YA」で、出金をめぐる騒動が起きています。

年利100%、キャンペーンを含めれば年利150%。 かなりインパクトのある利回りを掲げていたサービスですが、Xでは出金できないという報告が相次ぎ、さまざまな情報が飛び交っています。

この件を調べていて気になったのが、「KOL」と呼ばれる人たちによるサービスの紹介です。

KOL(Key Opinion Leader)とは、特定の分野で影響力を持つ人のこと。 「インフルエンサー」よりも専門的で、最先端で、その分野に精通した識者のようにも聞こえる肩書きです。

今回IZAKA-YAを紹介していた人たちを見ても、その分野を知り尽くした識者というより、SNSで人を動かす力に長けたインフルエンサーに近い人も含まれているように見えます。 「KOL」という肩書きが、実際以上に「専門家のお墨付き」のように受け取られてはいないでしょうか。

IZAKA-YA騒動を入口に、暗号資産界隈のKOLとインフルエンサーマーケティングについて考えてみます。

「KOL」という言葉が、勝手に信用を作ってしまう?

『インフルエンサー』と『KOL』という同じような立場の人物に、受け手が抱く印象の違いを対比した図解
『インフルエンサー』と『KOL』という同じような立場の人物に、受け手が抱く印象の違いを対比した図解

「インフルエンサー案件」と聞けば、今では「広告かもしれない」と身構える人も多いはずです。 ところが「KOL」と呼ばれると、少し印象が変わります。

インフルエンサーは影響力のある人。 KOLはその分野に詳しい人、識者。 こんなイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。

暗号資産は、ブロックチェーン、DeFi、レンディング、Perp DEXなど専門用語だらけです。 よく分からないサービスが出てきたとき、「この人は暗号資産に詳しい」「KOLとして有名」ということ自体が、サービスを信用する材料になってしまいます。

暗号資産に詳しいことと、そのサービスの安全性まで確認できていることは別の話です。

KOLとインフルエンサーは、本来なら少し違う文脈で使われる言葉です。 ただ、実際にはその境界はかなり曖昧です。

KOLが使っていても、安全性の証明にはならない

表側で入出金できているKOLと、その裏側で見えない資金の運用先を対比した図解
表側で入出金できているKOLと、その裏側で見えない資金の運用先を対比した図解

たとえばKOL本人が実際にサービスを利用していたとします。 案件として紹介しているだけで、本人は使っていないケースもあります。

仮に本人が利用していて、入金や出金まで問題なくできていたとしても、それだけでサービスの中身までは分かりません。

預かった資産をどこで運用しているのか。その利回りは持続可能なのか。十分な資産を保有しているのか。

こうした内部事情まで、外部のKOLが確認するのは難しいはずです。 「KOLが使っている」は「安全性まで確認されている」の証明にはなりません。

企業が欲しいのは「あなたを信じるフォロワー」

企業がKOLに報酬を払い、KOLがフォロワーから積み上げた信用ごと商品に乗せている構造の図解
企業がKOLに報酬を払い、KOLがフォロワーから積み上げた信用ごと商品に乗せている構造の図解

企業がKOLを起用する価値は、単純なフォロワー数だけではありません。 もっと強いのが、「この人が言うなら信用できる」と思っているフォロワーの存在です。

知らない会社から「年利100%です」と言われれば警戒しても、普段から見ているKOLから「自分も使っています」と紹介されれば、心理的なハードルは下がります。

企業が借りているのは、その人の知名度だけでなく、積み上げてきた「信用」そのものです。

これがインフルエンサーマーケティングの強さであり、怖さでもあります。

なぜ「KOL直営業」だったのか

企業からASPを経由してブログへ届く一般的な広告ルートと、企業からKOLへ直接アプローチするルートを比較した図解
企業からASPを経由してブログへ届く一般的な広告ルートと、企業からKOLへ直接アプローチするルートを比較した図解

今回確認できたIZAKA-YAの募集では、新規ユーザーが紹介リンク経由で登録してレンディングを開始すると、紹介者へ35USDTが付与されるという内容がありました。

IZAKA-YA → KOLが紹介 → フォロワーが登録・利用 → KOLに紹介報酬。 紹介報酬自体は珍しい仕組みではありません。 気になったのは、一般的な広告媒体ではなく、KOLへ直接アプローチして利用者を集めていたことです。

このブログにもアフィリエイト広告を掲載しています。 一般的なアフィリエイトでは、企業とブログや比較サイトの間にASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)と呼ばれる仲介事業者が入ることがあります。 企業→ASP→ブログ・比較サイトなど→読者、という形です。

一方、IZAKA-YAはKOLを直接募集していました。 直接募集そのものに問題があるわけではありません。 ただ、ASPへ広告を出稿する場合には、一般的にASP側による広告主や広告内容の審査が入ります(ASPを通しているから安全、という話ではありませんが)。

このサービスは誰のチェックを経て、自分のところまで届いているのか。 利用者側からすれば、考えておきたいポイントです。

サトシ(偽)
サトシ(偽)

はっきり言って私もアフィカスですが、このブログではアフィリエイト広告が掲載されていることは隠していません

広告なのに「個人的なおすすめ」に見える

テレビCMやネット広告の『広告』表示と、SNS上の『これ使ってます』という投稿の見分けにくさを対比した図解
テレビCMやネット広告の『広告』表示と、SNS上の『これ使ってます』という投稿の見分けにくさを対比した図解

インフルエンサーマーケティングでもう一つ気になるのが、広告と個人的なおすすめの境界線です。

テレビCMなら広告だと分かります。 ネット広告にも「スポンサー」などと表示されます。 ところがSNSでは、「これ使ってます。結構いいですよ」という普段の投稿とほとんど変わらない形で、サービスを紹介できてしまいます。

企業とインフルエンサーが直接つながること自体が問題なのではありません。

直接案件なのに「ただの個人的なおすすめ」に見えてしまうことが、問題になり得ます。

広告であるにもかかわらず、それが広告だと分からない表示は、日本ではステルスマーケティングとして景品表示法上の規制対象となる場合があります。 見る側も、「誰が紹介しているか」だけでなく、その人と企業がどのような関係なのかまで見ておきたいところです。

KOLを「崇拝」するのは危ない

KOLの発言をそのまま鵜呑みにして資産を送金してしまう人と、参考にしつつ自分で判断する人を対比した図解
KOLの発言をそのまま鵜呑みにして資産を送金してしまう人と、参考にしつつ自分で判断する人を対比した図解

KOLが「このプロジェクトは面白い」「自分も使っている」と発信すれば、それをきっかけに買ったり利用したりする人が出てきます。 詳しい人の意見を参考にすること自体は、何もおかしくありません。

ただ、「参考にする」と「判断を預ける」は違います。

フォロワーが多い。暗号資産歴が長い。海外情報に詳しい。KOLとして有名。 これらは、その人の情報を参考にする理由にはなります。 しかし、その人が紹介するサービスが安全であることの証明にはなりません。

暗号資産では、紹介された取引所やレンディングサービスへ、まとまった資産を送金・預け入れすることもあります。 「この人が言うなら大丈夫」という信用が、そのまま資金移動につながりやすい分野だからこそ、KOL本人への信用と、紹介されているサービスへの信用は分けて考えたいところです。

サトシ(偽)
サトシ(偽)

「あの人が使っているから」で判断が止まった時点で、それはもう自分の判断じゃなくなっているんですよね。

信用で稼ぐなら、その信用には何が伴うのか

信用を報酬に変えるKOLと、その信用にどこまで責任が伴うのかを天秤で表した図解
信用を報酬に変えるKOLと、その信用にどこまで責任が伴うのかを天秤で表した図解

企業がKOLに報酬を払うのは、その人の影響力や信用に価値があるからです。 一方、紹介したサービスで問題が起きたとき、「紹介しただけです」「投資は自己責任です」ですべて切り離せるのか。

KOLとサービス運営会社の責任は同じではありません。 それでも、自分の信用で人を動かし、それによって報酬を得る以上、その信用には相応の責任も伴うのではないでしょうか。

これはKOLだけの話でもありません。 アフィリエイト広告を掲載しているこのブログにも、同じことが言えます。

利用する側にできるのは、KOLを「答え」にしないことだと思います。 KOLは、あくまで判断材料の一つです。 「誰が紹介しているか」だけではなく、「なぜこの人が紹介しているのか」まで見る。 今回のIZAKA-YA騒動から考えておきたいのは、そこだと思います。

※IZAKA-YAの出金をめぐる状況や、紹介されていた条件の詳細は現在も情報が流動的です。本記事は騒動そのものの真偽や個別のKOLの行為を断定するものではなく、確認できている事実(高利回りを掲げていたこと、出金をめぐる報告があること、紹介報酬制度が確認できること)をもとにした一般的な考察です。

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